硫酸アルミニウムからポリ塩化アルミニウムへ変更するための検討という質問ですが、共にほとんどの濁質に対しても優れた凝集特性があり、日本の浄水場は、大抵、いずれかの凝集剤を使用しています。
日本での硫酸アルミニウムは取り扱いやすさなどの理由により、固形よりも液体が一般的です。また、気候の温暖な地域での使用が多く、これは、硫酸アルミニウムは寒冷地では析出する恐れがあるためです。
ポリ塩化アルミニウムは、硫酸アルミニウムと比較すると、適正凝集pH 範囲、適正注入率の許容幅、高・低濁時の凝集効果、アルカリ消費量、フロックの沈降速度などの面で有利と言われてきました。このように対応が広範なため、水質の変動が大きな原水の浄水場で使用されています。しかし、ポリ塩化アルミニウムによる処理水中には一部のアルミニウムが残存することから、pH コントロールなどの適正な注入処理を行う必要があるとされています。また、利便性から凝集剤を必要以上に注入しすぎる傾向が多くなり、薬品単価以上にコストがかかることになります。
凝集剤の効果は種類だけではなく、濁度、色度、pH、有機物量、藻類などの原水水質状況や水温などによっても異なります。したがって、凝集剤の変更を検討する際には、
① 原水の特徴を把握する。
② 処理の目的を明確にする。
③ 凝集剤の特性を知る。
④ 実証実験を行い、効果を確認する。
⑤ 実行するため条件(コストなど)を検討する。
などの手順が必要です。
具体的な処理水の目標値を決めて、ジャーテストによる検証を行い、必要ならば小規模のプラント実験実施し、総合的に検討してください。
東南アジアの気候は、濁度は高いけれど水温も高いため、いずれの凝集剤でも凝集効果は十分発揮される条件と言えます。どの凝集剤を使用しても、適正な注入処理や凝集・沈殿処理が実施されなければ十分な効果は得られません。
(回答者:工藤幸生、日本水道協会)
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