Q&A
疑問解決コーナー
Q9. 水道の消毒剤として二酸化塩素を使うメリットが多いと聞きましたがご意見をお聞かせください。 |
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最近、二酸化塩素(CLO2-S)という新しい製品が紹介されました。私の浄水場では消毒に塩素ガスを使っていますので、二酸化塩素についてはよく知りません。しかし二酸化塩素は多くの利点があるようです。例えば、100%安全。腐食性がないのでパイプを腐食せずに生物膜や藻類の腐敗臭を取り除いてきれいにすることができる。塩素ガスより10倍の殺菌力がある。扱いやすく、輸送や保管が簡単。多額の資金もいらない等など。当浄水場にとって塩素ガスと二酸化塩素のどちらが適当でしょうか。あなたの知識や経験に基づいて、アドバイスをください。 (Mr. M.N.R, カンボジア) |
A9.安全な水を供給するためにはきれいな状態で管工事を行う必要があることを、工事業者によく理解してもらうことが大切です。 |
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日本では、10年ほど前からある大手事業体とメーカーで実証的に検討しました。トリハロメタンの生成は少なかったのですが、少なくとも当時は現場で薬剤を混合するタイプの発生機だったので、混合比の調整が困難、副生成物として生成する亜塩素酸の毒性がある、使用する試薬の一部の爆発性が高く乾燥していると机に置いただけ(ちょっとした振動)で爆発する等の理由で積極的導入に進みませんでした。その後,最終副生成物の塩素酸の毒性評価が進み基準化され、ますます難しくなっています。特に温度が高い国では、二酸化塩素の副生成物の亜塩素酸、塩素酸への変換が早く、また、二酸化塩素が揮発しやすいので、制御が難しいのではないかと言うのが実際に使っていた方にも確認した感想です。臭気の閾値(ホームページ「用語解説」参照)も低かったようです。
安定化二酸化塩素という製品もありますが、薬品の供給、安定性、pH調整等の点から、原理的にいまひとつよく分からないのと、工場と離れた国で使えるかどうか不安です。日本では、地震対策もあって塩素ガスはだいぶ減り、現在、次亜塩素酸ナトリウムが85%、現場生成次亜が10%です。米国も作業者の安全確保等の観点から液体塩素、塩素ガスから次亜に転換の方向だそうです。生成次亜も装置と原料の塩の選択が重要なようです。質問に“100%安全”とありますが、消毒剤に“100%安全”は無いと思います。 今回のケースで何が一番いいかはわからないのですが、供給体制があり製品管理ができるのであれば、次亜塩素酸ナトリウムが実際的、そうでなければ塩素発生の方がよいのではないかと思います。 (浅見真理国立保健医療科学院) |
A9-2 |
横浜でも過去に実験をしていましたので、その結果を元にコメントいたします。 二酸化塩素のメリットとしてトリハロメタンの生成が非常に少ないことです。酸化力が強く、次亜塩素酸ナトリウム等より有機物質を分解してしまうようです。細菌の不活化に要するCT値(ホームページ「用語解説」参照)は次亜塩素酸ナトリウムの約10分の1という報告もあります。
デメリットは分解性が高いこと。特に光で分解するようです。分解すると、亜塩素酸を生じ、この低減が難しい。 ですから、溶液の安定性については疑問です。水道用としては難しいのではないのでしょうか。浄水処理に使うのであれば、オンサイトでの生成も検討すべきでしょう。 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは次亜塩素酸ナトリウムと同程度の生成でした。 結論としては、トリハロメタン濃度が非常に高く、そのままでは水質基準をクリアできない、といった場合に二酸化塩素を使う、ということかと思います。その場合にはオゾン処理も検討対象だと思いますが、価格の問題もあります。 安全性という点からなら、次亜塩素酸ナトリウムのほうが扱いやすいと思います。 (笹山弘 横浜市水道局) |