Q&A

疑問解決コーナー

Q12. 我々の浄水場では安全面から塩素ガスの使用をやめて次亜塩素酸ナトリウムに変更したいと考えています。日本では多くの浄水場で次亜塩素酸ナトリウムを使っていますね。以下のことを教えてください。
(2)市販の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)と電気分解による自家製造のNaClOの比較。また、1gのNaClOを生成するために何ワットの電力が必要ですか。
(MR. M.N. カンボジア)
A12-2-1.大多喜浄水場(千葉県)の例

大多喜浄水場は南房総地域の用水供給の施設として、平成8年度に稼動している比較的新しい浄水場であり、利根川から取水した水を房総導水路・長柄ダム・南房総道水路を経由した原水を処理しています。
浄水場から一番遠い南房総市の白浜地区までは3日から4日程度かかるため、原水への粉末活性炭の注入と浄水処理工程におけるきめ細かな薬品注入により送水時のトリハロメタンをできるだけ抑える必要があり、浄水場のほかに2か所で追加塩素注入を行っています。なお、稼動当初からNaClO生成設備でNaClOを生成(能力は300kg/日)し、使用しています。
生成NaClOは原料の塩を水に溶かした飽和食塩水をポンプで生成装置に送り、電気分解槽を通過する間に有効塩素濃度約1%のNaClOが生成されます。
塩は長期保存も可能で変質することもありませんが、浄水場用は大型ダンプで年間7回程度搬入しており、場外2か所の追加塩素設備(同じくNaClO生成設備を運転)については20kg袋で購入しています。

NaClO生成設備は自動運転で行っており、安価な夜間電力を使用し生成しています。(貯蔵タンクは屋外に2槽設置しているが、濃度の低下はない。)
生成NaClOの平成21年度(浄水場分)のコストを算出すると、
① NaClO生成量2,128,000kg
原料 塩 59,570kg 約260万円
② 電力 運転時間約1,700時間
電力使用量 約85,000kwh
年間料金  約100万円(基本料金含まず)
③ 維持管理費(電極の酸洗浄、電極の再コーティング等) 10年間の平均で 約500万円/年
① + ② + ③= 約860万円となります。
浄水場施設能力は55,060m3/日であり、浄水場の年間送水量は、11,225,001m3、一日平均送水量は30,753m3です。また、NaClO生成装置の建設費用は薬注設備等(建築物、薬品注入設備、貯蔵タンク等)を除き約1億4千万円です。
市販NaClOとの想定比較によるメリット・デメリットについては、

メリット
○ 1%濃度のため、きめ細かな注入制御が可能
○ 注入配管におけるガスの発生がなく、また結晶物の析出も比較的少ない。
○ 貯蔵タンクを屋内に設置しなくても良い。
(購入NaClOの場合は高温時に塩素酸の影響から空調で温度調整の必要があるが、生成NaClOの場合は製造から消費までの期間が短いので不要)
デメリット
○ 設備費が高価
○ 維持管理費も比較的高価(定期点検や修繕等)
以上があげられます。
(文責 今関 浩 南房総広域水道企業団)

*(参考)
市販NaClOの単価
地域によって、また大型ローリーの場合は工場からの距離によって単価は変わると思いますが、K市の場合には3tの大型ローリーと200kgのポリ容器の2種類で購入しています。平成21年は3tローリーで39.27円/kg、200kgポリ缶で63.00円/kgでした。
市販のNaClOは有効塩素濃度が12%程度、生成NaClOの場合は1%程度ですので、単純に計算して市販NaClOの使用量は生成NaClOの12分の1になります。また、設備としてガス抜き装置が必要となります。  (文責:小田嶋・山本)

A12-2-2.日本のS市の例

某浄水場では平成21年度実績で、NaClO生成量
(1%濃度のもの)=1,899,580kg/年、電気使用量 =89,390kwh/年。 ちなみにNaClO自家生成装置は、約2億円だそうです。
(小田嶋 明彦 北上市上下水道部)

A12-2-3.ベトナム フエ省水道公社の例

水道公社のクォンテ2浄水場でNaClOを自家生成し、隣接するクォンテ1浄水場にも送っています。
クォンテ1+2で水処理総量は100,000m3/日NaClO生成量は35-40m3/日(濃度はNaClOとして5.0g/L、有効塩素として0.48%) 塩素注入率は1.6mg/Lです。電力は1gのNaClOを生成するのに7.58wh消費されます。生成率1.24m3/hour. 別の言い方をすると1時間に6.2kgのNaClOを生成します。
中心地から離れた小規模浄水場でも電気分解でNaClOを自家製造しています。ここの処理水量は300~400m3/日 、NaClO生成量はNaClOとして濃度5g/Lで150L/日、 注入率は塩素として1.6mg/L です。またヤーヴィアン浄水場というところでも独自の生成装置を持っています。


(文責:Ms.Tran Thi Minh Tam フエ省水道公社、補足:笹山弘 JICAプロジェクトチーフアドバイザー)