Q&A

疑問解決コーナー

給水地区の一部の蛇口の水から黒い小さな粒子が出ました。 なぜ蛇口の水の水質が変わ ったのか、その理由を調べています。助言をお願いします。(C.V. カンボジア)
A-1

水中の鉄・マンガンが消毒用の塩素により、酸化され、 不溶性の酸化物が管の内面に付着したのでしょう。 この、鉄・マンガンがどこから来たかと言うことですが、本来で すと、原水由来と考えられます。原水中の粒子状(濁質 中)の鉄・マンガンは浄水処理でほとんどは除去されます。 溶存性の鉄は浄水処理で容易に除去できますが、溶存 性マンガンはむずかしいとされ、除マンガン処理を行います。 添付のアルカリ度の推移からは、 急激に水質が変化したとは思 えませんが、原水中の鉄・マン ガンの濃度(溶存性及び総量)、 pH、残留塩素濃度など各種の バックデータを確認してください。

(工藤幸生)
A-2

マンガンは塩素で酸化されますが、その反応はゆっく り起きます。マンガンの一部は酸化後沈殿池とろ過池で取 り除かれますが、ほとんどのマンガンは配管網内で塩素によ って酸化され、酸化マンガンとしてパイプに沈着します。マン ガンの沈着物は長期間かかって増えていきますが、その量 は浄水のマンガンの濃度と流速、温度、残塩などによって 違ってきます。
横浜の場合、浄水のマンガン濃度は0.0001- 0.0005mg/L です。酸化マンガンは浄水のマンガン濃度が 非常に小さくても長期間後に沈着します。マンガン沈着物 は水流が極端に変化する時などに蛇口から出てきます。あ なたの場合、原水のマンガン濃度は0.001-0.04mg/L なの で容易に沈着物を生成します。最も一般的な除去方法 はマンガン砂(グリーンサンド)を急速ろ過に使う事です。マ ンガン砂は粒子が酸化マンガンで覆われていて、水中に溶 解しているマンガンはマンガン砂と接触して容易に酸化マンガンになり、沈殿、ろ過で除去されます。
また塩素との接触時間を十分とる ために前塩素処理を勧めます。 *WHO の飲料水ガイドライン第3版 の12.79 マンガンに関する追加コメン トを参照してください。

(笹山弘)
A-3

お尋ねの問題は日本各地の水道でも「赤水」問題 として悩まされている、代表的な水道のトラブルの事例と思 われます。私の経験では、凝集処理が適切に行われた場 合、前塩素(または中塩素処理)と急速濾過(マンガン砂) の組合せによって、鉄及びマンガン等の重金属はほぼ完全 に除去できます。しかし、浄水のpHが7.5より低い場合、 特に7.0以下の場合は水道管の鉄分が溶解して配管内 に沈着する現象が見られます。特に無ライニングのGP(鋼 管)が存在すると溶解が進みやすく赤水問題の発生源と なります。また、モルタルライニング管であってもモルタルの溶 解を促進し管の寿命にマイナスの影響を与えます。 赤錆 びやマンガンの沈着が進行すると、配管内の流速や流向 の急激な変化があった場合などには錆が剥離して大規模 な赤水(黒水)トラブルとなります。
赤水の有効な対策としては、
① 無ライニング配管がある場合はライニング管に更新する。
② 1が難しい場合は、管更生によるライニングを行う。
③ pHが低い場合は、浄水場のろ過池出口等で後アルカリを注入しpHを7.5程度まで上げる。
などの方法があります。
私の経験では、3の方法により、年間平均pHを6.6から 7.4に上げたところ、末端給水栓の金属濃度が、銅で0.087から0.023mg/L、鉄で0.015から0.005mg/L、 亜鉛で0.014から0.004mg/L、マンガンで0.002から 0.001mg/L 未満に減りました。 (地下水が原水の場所な ので、水源が表流水の場合はこれほどの効果は見込めま せんが) ご質問の水質を拝見すると、平均的にpHは高めのようで すが4月から5月中旬頃までは低い時期もありますので、こ のような時期に後アルカリを注入すれば水質改善に繋がる のではないかと思います。
ただし、一度沈着してしまった鉄 分は残留しますから赤水解消には 時間を要するかもしれません。ドレ ン管などから強制的に排水する方 法もありますが、苦情が殺到する リスクを伴いますので、十分に住民 に説明する必要があります。

(小田嶋明彦)
A-4

フエ水道会社では、配管内の鉄とマンガンの黒い 粒子の沈着について、以前はよく起こる問題でした。
ある時、今までにない鉄とマンガンの問題が発生しました。 上流の原水水質が水力発電用ダムの稼動で変わってしま ったのが原因でした。川の流れがゆっくりになり、鉄、マンガ ン濃度が増えました。浄水は高い鉄マンガン濃度を有する ようになりました。マンガン濃度は約0.07-0.1mg/L、鉄濃 度は0.05-0.1mg/L で、これが配管内の沈着物の原因で した。当時はマンガン砂や前塩素、pH を上げるという処理 をしていませんでした。 2009年8月からは上記の処理を 取り入れ、浄水水質が良くなりました。現在の浄水水質は 次の通りです。
マンガン(Mn ) < 0,02 mg/L
鉄(Fe) <0,05 mg/L
私たちは配管内の沈着物を頻繁に チェックし、必要であれば管洗浄を 実施することにしています。

(Ms. Tran Thi Minh Tam)