Q&A

疑問解決コーナー

藻類対策のSOP(Standard Operating Procedure: 標準作業手順)を作りたいのですが、事例を紹介してください。(S.K. タイ)
A-1

浄水場運転SOPの目的は、藻類繁殖時にろ水に藻類が漏出しないような運転操作基準(SOP)を作り、運転員の判断ミスもしくは操作ミスによる藻類の漏出をできる限り防ぐことではないかと思います。私の経験から思いついたことを記述します。
1. 藻類繁殖時の薬品注入率の決定方法
ジャーテストにより藻類に有効な凝集剤の種類(パック、バンド)、注入率、及び前塩の注入率を決定する。
2.沈殿池の排泥基準
藻類の多いフロックは沈殿池での沈降があまりよくない場合が多いが、通常より排泥を増やして効果があるか検証してみる。
3.ろ過池の洗浄基準
・ろ水への濁質漏出を検証し、損失水頭の基準を検討・捕捉されている藻類に対して洗浄効果を検証し、逆洗水量、逆洗時間を決定(藻類繁殖時には洗浄回数が増えるが、例えば通常のフロックより少ない逆洗水で洗浄効果があれば洗浄回数を増やすことができる。)
・配水量の少い夜間では基準損失水頭でも洗浄を検討。
・現在、通常時の浄水場運転に関するSOPが既にあれば、そのSOPに藻類繁殖時のSOPを追加すれば良いと思います。
又、これから先何年も、藻類の発生が予測されるようであれば、アンスラサイトと砂の二層ろ過への改造も検討してはいかがでしょうか。

(北九州市上下水道協会 加賀田勝敏)
A-2

1) 藻類対策マニュアル(SOP?) を誰が使うのか、というのもポイントだと思います。浄水場オペレーターをターゲットにしたものと、水質管理スタッフをターゲットにしたものではかなり違うはずです。それをひとつにしてしまう、というのも手なのですが、(1)ひとつにまとまっていると、事業体の藻類対策全般がわかりやすい、(2) 改訂の際に、不整合が起きにくいという長所はありますが、(3)ボリュームが大きくなる(必要な箇所を探すのに時間がかかる)、(4)改訂時の作業量が多い、(5)作業ごとの責任者がわかりにくくなる(誰もやらない作業ができてしまう)という欠点があります。
特にオペレーターが使うものは、彼らのすべきことを明確にしてあげることが、間違い(誤解、見逃し)を減らすために重要だと感じていますので、わたしはこれらの二つは別にした方が良いと考えています。他の部分は互いに参考として配布すればよいと思います。この場合、それぞれの内容は組織によって、若干変わることになりますね。
2) 浄水処理対策の構成
浄水処理の対応は、障害別に整理するのがいいでしょうね。
(1)凝集阻害、(2)ろ過閉塞、(3)ろ過池漏出、(4)臭気障害。 藻類毒を項目として入れますか?(ここは生物屋さんの意見を聞きたいところです。) 私は、水質管理スタッフ向けのところで、注意喚起をしておく程度か、と思っています。
3) その他(とりあえず思いついたこと)
ろ過閉塞、ろ過池漏出は対策のひとつとして、取水量の減量→処理工程の流速減少も考慮する必要がありますが、浄水不足への対応ということで他部課(広報等)との連携も必要です。

(笹山弘)
A-3

日本水道協会で「生物障害を起こさないための浄水処理の手引き」(H18年3月)というガイドラインのようなものが出ています。目次だけですが、お知らせします。
生物障害を起こさないための浄水処理の手引 目次
(平成18年3月 日本水道協会発行)

第1章 水質管理における新しい動きと生物障害
1. 水道水質基準とデータの質と保証
2. 安全な水道水を供給するための新しい体制整備
3. 水道ビジョンの中で関連する生物障害
4. 水道水質管理
5. 生物障害の克服に向けて
第2章 水道と生物
1. 生物が水道システムに及ぼす危害
2. 生物が水道システムへおよぼす危害の対応
3. 水道システムに危害を及ぼす非病原生物
第3章 生物障害
1. 生物障害の歴史
2. 生物障害報告事例
3. 本書で扱う生物障害
4. 各生物障害の定義及びその原因生物等
5. 浄水処理方式と生物障害
第4章 生物障害の原因物質
1. 生物障害原因生物の抽出
2. 障害生物
第5章 生物障害対策の管理目標
1. 生物障害対策の管理目標(値)設定の考え方
2. 施設運転管理に係る障害
2.1 凝集沈殿処理障害
2.2 ろ過閉塞障害
2.3 漏出障害
3. 水道水の品質に係る障害
3.1 異臭味障害
3.2 浄水着濁障害
3.3 浄水着色障害
3.4 肉眼的生物の流出障害
4. その他の障害
第6章 生物障害の監視及び原因調査
1. 生物障害の監視及び原因調査等の手順
2. 施設運転管理に係る障害
3. 水道水の品質に係る障害
4. その他の障害
5. 障害生物を定量する方法(生物試験方法)
第7章 生物障害対策各論
1. 生物障害対策手法の選択
2. 水源(原水)の対策
2.1 障害生物の原水への混入量を減少させる方法
2.2 障害生物の水源での繁殖を抑制する方法
3. 浄水処理工程での対策
3.1 急速ろ過方式の場合
3.2 緩速ろ過法方式の場合
3.3 高度浄水処理方式の場合
3.4 消毒のみの方式の場合
4. 送水過程での対策
第8章 小動物による障害と対策
1. 流出障害の原因となる小動物
2. 小動物によるその他の障害
第9章 海外の生物障害対策
1. アメリカ水道協会(AWWA)の生物障害対策マニュアル 2. オーストラリア飲料水ガイドライン
3. チューリッヒ水道での緩速ろ過池及び貯水槽での無脊椎動物の出現

(日本水道協会 工藤幸生)