Q&A

疑問解決コーナー

地方水道を担当する政府の職員ですが、ジャーテストの必要性、方法、注意点など教えてください。
A-1

1)はじめに

 凝集沈殿処理の場合、凝集剤の注入率は濁度、pH値、水温、アルカリ度などの浄水場原水水質によって決められます。適正な凝集剤の注入率を決めるために、浄水場原水を用いて定期的にジャーテストをおこないますが、原水水質の急変時などにも適宜おこないます。ジャーテストで良質のフロックが生成され、上澄水の濁度が最も低くなる凝集剤の注入率が最適な条件となります。凝集用薬品としては凝集剤のほかにpH調整剤(酸剤、アルカリ剤)及び凝集補助剤があり、必要に応じて使われ、それらの注入率もジャーテストによって判断します。浄水場のオペレーターは凝集用薬品の適正な注入率をジャーテストの結果を参考にし、更に実際の凝集沈殿池の凝集沈殿状態を見ながら決定します。

2) 凝集用薬品

①凝集剤
硫酸アルミニウム:Al2(SO4)3 、ポリ塩化アルミニウム(PAC):[Al2(OH)nCl6-n]m、塩化第二鉄:FeCl3、硫酸第二鉄:Fe2(SO4)3などがありますが、日本では硫酸アルミニウムとPAC(ポリ塩化アルミニウム)が一般的に使われています。PACは日本で開発された無機高分子凝集剤で、硫酸アルミニウムと比較すると、適正凝集pH範囲、適正注入率の許容幅、高濁度または低水温時の凝集効果、アルカリ消費量、フロックの沈降速度などの面で有利です。
PACを注入するとpH、アルカリ度は図のように低下します。


最適注入率を超えた過剰なPAC注入は図のように凝集効果を悪化させ、濁度が上がる原因になります。

②pH調整剤
原水のpH値が高すぎる場合は酸剤を、pH値が低い場合やアルカリ度が不足する場合はアルカリ剤を使用し、最適凝集領域になるように調整します。酸剤としては濃硫酸、塩酸、炭酸ガスなどがあります。アルカリ剤としては水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、液体水酸化ナトリウムなどがあります。
③凝集補助剤
原水濁度が高い時、原水水温が低いときなど凝集剤とpH調整剤を使用しても良いフロックができない時があります。その場合に凝集補助剤が使われる場合があります。凝集補助剤としては活性ケイ酸、水道用アルギン酸ソーダ、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤があります。

3) ジャーテストの準備 (凝集剤としてPACを使う例)

薬品:
① 1%のポリ塩化アルミニウム(PAC)溶液を作る。 5.0gのポリ塩化アルミニウムを精製水に溶かしてメスフラスコで500mlまで希釈する。PAC1%溶液を1ml、原水1Lに注入した場合、原水のPAC濃度は10mg/Lとなります。
② 1/50N(1/100mol)硫酸を用意。
③ MR-BCG 指示薬を用意。
④ 器具類:
ジャーテスター、
メスフラスコ500ml、
ビーカー1000ml、
メスシリンダー1000ml 
ホールピペット(10ml
または20ml)、濁度計、pH計、温度計、
三角フラスコとビュレット(アルカリ度測定用)

4)  ジャーテストの方法

①原水の温度、pH、アルカリ度、濁度を測る。
②1Lの原水をジャーテスターのそれぞれのビーカーに注入する。
③撹拌翼をそれぞれのビーカーにセットする。
④凝集剤(PAC)をピペットでそれぞれのビーカーに素早く注入する。
⑤1分間140rpm*で急速撹拌する。
(*rpm: revolution per minute:毎分回転数)
⑥10分間50rpmで緩速撹拌する。フロックの形成状況(速度、大きさ)を観察する。
⑦10分間静置し、その間のフロックの沈降状況を観察する。
⑧上澄水の濁度、pH、アルカリ度を測る。フロックが舞い上がらないように注意します。
⑨すべての結果から最適注入率を決定します。
※⑤⑥⑦の回転数および時間は、水源水質や混薬・フロック形成設備の特性を踏まえて任意に設定する

(参考例)
測定結果をジャーテスト・データーシートに記載する。

データーシートから50mg/L が最適となるが、さらに 50mlg/L 前後で細かく注入率を変えて同様の試験をおこ ない最適注入率を決定します。

良い結果が得られない場合には凝集剤の注入率を変えた り、pH 調整剤、凝集補助剤などを使用してテストを繰り 返します。

仙台市水道局海外研修用テキストから引用しました。 山本