Q&A

疑問解決コーナー

EM菌は河川等の水質汚染の低減に効果がありますか。(Mr. L.K. タイ.)
A

*EM菌: Effective Microorganisms (有用微生物群)は1982年に琉球大学農学部比嘉照夫教授(当時)が、農業分野での土壌改良用として開発した微生物資材の名称で、乳酸菌、酵母、光合成細菌を主体とする微生物の共生体で、農業肥料、環境浄化、健康促進等に効果があると、比嘉氏を中心としたグループが主張し、普及活動をおこなっています。しかし、日本において、その効果に関しては賛否両論があります。今回、タイの会員からの質問に対して、赤石会員から経験に基づいたご意見をいただきました。(WaQuAC-NET事務局 山本)

河川等の水質汚染低減効果はほとんどありません。
日本では、10年ほど前にはEM菌を含む団子(EM団子)を河川にばら撒いて、河川浄化をしよう!という環境団体が沢山ありましたが、水質改善効果が得られたという話は聞きません。行政側もこれらの団体とは一線を画しております。
河川・湖沼には既存生物が存在し、多種な生物が拮抗している状態です。この中に外来のEMを入れても、よほどその環境下で増殖能力が他を凌駕しない限り、しばらく経つと拮抗してきます。そもそも増殖速度はウィルスのような非生物でもない限り、倍加速度は最適培養下にある大腸菌でも20分です。
従って、河川などから隔離した状態(例:河川浄化施設)で、その環境容量に対して大量のEMを散布しない限り、EMが優先種になることは困難であると考えられます。つまり、既存種が多種大量にある状態の河川など公共用水域に微々たるEMを加えても水質浄化は見込めない、ということになります。
 実際、私の経験ですが、福岡県内の都市河川でEMを地元小学校が散布したが、効果が見られなく、水質改善要求も高いことから、河川浄化施設を導入しよう、ということになり、基本設計をしたことがあり
ます。なお、浄化槽など隔離空間で散布すると性能が向上するらしい、ということは聞いたことがありますが、これも隔離かつ環境容量に対しての導入量が大きいためと考えられ、正直言ってEMでなくてもよいと考えます。

文責:赤石維衆(赤石水技術士事務所)
*河川浄化施設:汚染が進行した河川水を直接浄化する施設で沈殿、ろ過、植生浄化、ばっ気、礫間接触酸化法などがある。(事務局注釈)