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疑問解決コーナー

漏水が多い場合、対策として配水ブロックシステムの導入が良いと聞きました。配水ブロックシステムについて教えてください。 (Mr. B.D. インド.)
A

配水ブロックシステム(DBS: Distribution Block System)は、横浜市水道局では1971年から採用されており、各配水池を中心として給水圧力の調整を目的とした配水システムである。各ブロックは大・中・小に分かれる。大ブロックは一つの配水池から供給される区域全体を1ブロックとしている。この大ブロックの中を配水池からポンプを経由して給水されるポンプ系区域と配水池から直接給水される自然流下系区域に分割した区域が中ブロックである。その中ブロックをさらに地盤高さや給水戸数を勘案し、給水圧を一定の範囲内に収めるとともに、ブロック内の給水人口も一定の範囲内に収めて管理しやすく分割した最小単位のブロックが小ブロックである。

また、各ブロック間を事故時等相互に連絡できる管を布設することで相互に(地形やポンプ揚程によっては一方向のみの場合もあるが)バックアップが可能となり、管路工事や事故による影響(断水区域・断水時間)を最小限に収めることで、安定した24時間給水が実現できることとなり、高度な水道サービスを提供できる。

横浜市は地形的に多くの丘陵や谷(小河川)があり、起伏が激しいため、水圧管理に適したDBSを全国に先駆けて導入したことにより、複雑な地形にもかかわらず24時間安定した給水体制を確保している。

*途上国の多くの国では給水方式としてDMA (District Metered Area)を採用している。規模的には配水ブロックシステムの小ブロックにあたる。

DMAとは「水道メータで給水量を管理する区切られたエリア」を意味し、一箇所もしくは複数箇所からの水道水の流入量を流量計(流量メータ)で計測し、区切られた区域内の各戸に設置されている水道メータの使用量の全戸分の合計を差し引きすることで、ある期間内のDMA内での損失流量が計測できる。

(損失流量[m3]=流量計の数値[m3]-Σ各戸の水道メータの数値。 これより、DMA内の無収水率が計測できる。

(無収水率[%]=損失流量[m3]÷流量計の数値[m3]×100%)。

各戸メータの流量はメータ検針時に計測されることから、DMA内の全ての各戸メータの同時期の使用流量は計測できないため、流入する流量計の水量データと各戸メータの水量データの間には若干のタイムラグがあり、正確な無収水率は計測できないが、無収水率の傾向を評価するには満足するデータである。

正確にDMA内の無収水量(漏水量)を計測するには、夜間の水使用量が少ないときに小流量対応の記録式流量計を設置して計測することで、全戸が水道を使用しない一瞬(サンプリング間隔:2秒程度)の最小流量を探すことで、DMA内の無収水量を計測できる夜間最小流量測定法がある。これは、一夜でなく一週間程度以上を計測することで、より最小流量を計測できる可能性が高くなるので、昼間は通常使用流量の設置されている流量計で計測し、夜間に小流量対応の記録式流量計で計測できるよう、流量計まわりをバイパス式や切り替え式に整備する必要がある。

DMAを区切る際には、地形(地盤高さ)を考慮しなければならない。地盤高さが高い所への給水は給水圧力が下がり、低い所への給水は給水圧力が上がるため、極端な地盤の高低差がある場合は、DMAを分割する必要がある。

DMAシステム(左)と配水ブロックシステム(右)の模式図


中之薗賢治さん 横浜ウォーター(株)