Q&A

疑問解決コーナー

途上国でも凝集剤にPACを使う事例が増えているそうですが、条件が悪ければPACの効果が出ないと聞きました。どのような場合にPACの効果が出ないのでしょうか。(K.A. Cambodia)
A

 硫酸アルミニウムと比較してポリ塩化アルミニウム(PAC)は適正凝集範囲が広く、低濁度、高濁度時の凝集効果も大きいため、原水水質の変動に対しても安定した凝集効果が得られる利点があります。ただし、このPACの効果を得るためには、適正な注入処理、特に急速撹拌が必要です。

 一般にPACの最適注入率はジャーテストによって求められますが、このジャーテストによって求めた注入率で実際の注入を行っても、ジャーテストと同様の凝集効果を得られない場合があります。これは急速撹拌が適切になされなかった場合です。PACはその特性上、硫酸バンドよりも確実な急速撹拌が求められます。ジャーテストでは小さなジャーの中の試験水を撹拌する為、PAC注入後の急速撹拌は瞬時に確実に行われます。しかし、実際池では処理水量が大きいため、ジャーテストよりも急速撹拌に時間がかかっている場合が多々あります。ジャーテストと同様の凝集効果を実際地でも得るためには、ジャーテストと同様の急速撹拌効果を得る必要があります。

 確実な急速撹拌を行うためには、フラッシュミキサーの直ぐ上流側に水中で多点注入をするのなどの注入装置(注入配管)の工夫が必要です。処理量がそんなに大きくない浄水場では注入点を適正に設定するだけでも十分な急速撹拌が得られることもあるでしょう。実際池でジャーテストと同様の凝集効果(未ろ水濁度)が得られれば、急速撹拌は上手くなされていると判断してよいでしょう。

 最初に述べたように、PACは水質変化の大きい原水でも対応できる利点が有ります。しかし、硫酸バンドでも十分な凝集効果が得られる原水もあり、凝集剤の選択には、ジャーテストでの比較も含め総合的な検討が必要です。

 回答者 加賀田 勝敏 (水道施設維持管理専門家、元北九州市水道局)